1. 第87回夏期講習会プログラム 各講義の概要

7月27日(木)10:00~18:30

1. 吉川 彰(先端結晶工学研究部) 
 「新規単結晶の開発とその実用化技術の開発」

キーワード:単結晶、バルク単結晶、スクリーニング、結晶成長、マイクロ引下げ法、引上げ法
内容:現在の市民社会の利便性を支える電子デバイスの重要な材料としてシリコン(Si)やタンタル酸リチウム(LT)に代表されるバルク単結晶が用いられている。SiやLTを超える次世代デバイスの開発には新規単結晶が必要となるが、そのためには迅速な新規単結晶の開発と、その迅速な実用化が重要となる。本講義では酸化物、ハロゲン化物、合金などを題材に、新規結晶開発の際の迅速結晶作製法、評価法に加え、実用化で重要となるバルク結晶作製技術の開発についても講義する。加えて、実際に研究室で開発した新規単結晶やその実用化例も紹介する。

2. 千葉 晶彦(加工プロセス工学研究部門) 
 「金属積層造形(3Dプリンタ)技術の基礎と応用」

キーワード:積層造形、3Dプリンタ、電子ビーム積層造形、レーザー積層造形
内容:「3Dプリンタ」として注目されている金属積層造形は、金属粉末を用いて3DのCADモデル通りの形状に造形が可能であり、省資源省エネルギータイプの次世代のネットシャイピング技術として期待されている。本講義では、金属積層造形技術の基礎と応用について解説し、あわせて最近の研究開発動向と将来について展望する。

3. 藤原 航三 (結晶物理学研究部門) 
 「Siの融液成長メカニズムと太陽電池用Si多結晶インゴットの成長技術」

キーワード:固液界面、組織制御、太陽電池
内容: Si多結晶は実用太陽電池で最も多く利用されている。しかしながら、一方向凝固法(通称キャスト法)により作製されるSi多結晶インゴット中には結晶粒界、双晶粒界、転位、不純物など多種多様な結晶欠陥が存在するために、太陽電池のエネルギー変換効率はSi単結晶太陽電池よりも劣っている。本講義では、Siの一方向凝固過程で固液界面で生じている様々な現象について、結晶成長の基礎的観点からそれらのメカニズムを解説し、Si多結晶インゴットの高品質化へ向けた取り組みについて説明する。

4. 加藤 秀実 (非平衡物質工学研究部門 
 「金属溶湯脱成分法による新しい多孔質金属の作製とその応用」

キーワード:脱成分法、多孔質金属、卑金属
内容:ナノポーラス金属は、莫大な比表面積を有し、次世代高機能材料として期待される。我々は金属溶湯内で生じるデアロイング法を考案し、酸やアルカリ水溶液等を用いた従来のデアロイング法では作製が困難であったTi, Zr, V, Nb, Cr, MoやWなどの代表的卑金属、β-Ti (Ti-Zr-Cr)、Fe-CrおよびNi-Cr等の合金、更に、Siといった半金属の三次元ナノポーラス化に成功した。また、この反応原理を拡張し、固相金属間で生じる脱成分反応を利用した三次元ナノポーラス卑・半金属の開発に繋げた。これらの新規材料は、諸電池電極、触媒やその担持体、および、生体材料への実用化が期待される。

5. 杉山 和正(ランダム構造物質学研究部門) 
 「X線回折法と材料開発:非晶質から結晶まで」

キーワード:X線回折、結晶構造、非晶質構造
内容:電磁波であるX線を荷電粒子に照射すると、荷電粒子は振動運動し、そして振動運動する荷電粒子からは入射X線と同じ振動数(波長)のX線が放射される。荷電粒子の位置に何らかの相関があれば、散乱されるX線は干渉し相関に対応する強度パターンを示す。X線回折法は、この原理を用いて物質を構成する原子(電子)の位置が既存の物質と同じであることを確認する目的、あるいは原子配列を直接決定する目的に効果的な方法論であり、材料の構造評価の分野では欠かすことのできない実験法の一つである。
本講習会では、X線回折法で得られた材料構造評価の解析事例の紹介を通じて、本実験手法の詳細を解説する。さらに、最新の放射光源を用いることによって広がる新しい構造評価法に関しても講義する。

6. 今野 豊彦 (不定比化合物材料学研究部門) 
 「透過電子顕微鏡の基礎と材料開発への応用」

キーワード:金属物理学、構造・組織解析、透過電子顕微鏡、結晶構造、物質の安定性
内容:透過電子顕微鏡は、物質の構造と組織を同時に直視できる装置として、幅広い研究者層に用いられているが、一方で他の解析機器と異なり、結像原理を正しく理解していないと誤った結論に陥る危険性が高い。近年、周辺機器を含めて長足の進歩を遂げ、これまで不可能であった局所領域からの観察、三次元的な可視化、さらに原子レベルでの化学種の同定などを容易に行うことができる。本稿では「何をみているのか」を理解するための基礎知識を、応用例とともに紹介する。